中国には「新幹線の寝台車」がある

相方さん

2009年10月25日 23:00



お隣の中国では、昨年(2008年)の12月21日から、首都の北京-上海間で
高速車両CRH2を寝台車仕様に改造した列車の運行が始まったそうです。



日本の東北新幹線を見たことがある方は、写真を見れば分かると思いますが、
CRH2は、日本で「はやて」、「あさま」などとして運行されている
E2系新幹線電車がベースになっています。




こちらが、JR東日本の東北新幹線E2系。
確かに、色が違うだけで、よく似ています。




CRHは、日本の他にも、カナダ・ボンバルディア社、ドイツのICE3、
フランスのTGVを製造したアルストム社とも技術提携をしており、
さまざまなタイプがあります。



ちなみにCRHとは、(China Railway High-speed )の略です。
寝台車仕様のCRH2は、正確にはCRH2Eと呼ぶそうです。


日本の新幹線は、停車駅や行き先の違いで「ひかり」、「こだま」、
「はやて」、「あさま」などそれぞれ別の名前で呼ばれていますが、



中国のCRH車両は全て「和諧号」(和諧=調和の意)という
統一名称で呼ばれています。




目立つ場所にでっかく「和諧号」と漢字で書いてあるところが
中国っぽくていいです。



北京の出発時間は午後9時以降で、上海到着は翌朝7、8時前後。
最高時速は250キロメートル。
北京-上海では毎日片道2列車、北京-杭州でも同1列車を運転します。



国土の広い中国では、CRHで最高時速250kmで走行しても、
北京-上海間は10時間もかかるそうです。



これでは昼間運行しても、飛行機に対抗できないので、寝台車にして、
「夜に乗車、翌朝着」の運行ダイヤすることで、目的地での時間を有効利用
できるようにし、従来の航空機利用客の取り込みを図るようです。



しかし中国では、「航空機は豪華、鉄道は最低限のサービス」との
イメージが強いです。私も過去に普通の寝台車に乗ったことがありますが、
中国の列車は、車内がとにかく汚いです。



そのため、新たに導入された寝台車は、「飛行機のファーストクラス並みの
サービス」を実現する、と宣伝しています。




列車は日本の東海道新幹線と同じ16両編成で、両端は日本の
グリーン車(座席)に相当する「軟座車」。食堂車1両もついていて、
残りの13両はコンパートンメント形式の寝台車となります。




寝台車は4人部屋で、2段ベッド。1車両当たりの定員は約40人。




写真はコンパートメントの内部。中国で軟臥(ルアンウォー)と呼ばれる
一等寝台とほぼ同じですが、旧式の軟臥に比べ、各個室は十分なスペースが
保たれており、下段のベッドはリクライニング式。列車内は全て禁煙です。




ベッド毎に液晶テレビが備え付けられ、イヤホンで聞けるようになっています。
乗務員が常時待機しているため、呼び鈴を押していつでも呼び出すことが
可能です。インターネット環境も完備されています。



乗務員は、外国人旅行者向けの英会話や北京、上海の文化、緊急時のための
救急救命など幅広い訓練を受けているそうです。




真ん中の8号車は、食堂車になってます。
メニューは中国料理と西洋料理40種類以上。深夜にはバーになるようです。
料理の価格帯はおおむね8-20元(約105-262円)。




日本の新幹線ではすっかり姿を消した食堂車も、
ここでは体験できることになります。




寝台車なので、洗面台もあります。




トイレは和式と洋式の両方があり、赤ちゃん用のおむつ交換台も完備。




和式(正確には中国式?)がいかにも中国っぽいです。



ところでCRHは現在、北京-上海間で建設が進められている
京滬高速鉄道(けいここうそくてつどう)を走るのではなく、


在来線を走る高速寝台列車として運行します。





寝台車両の外観は、車内が個室となっているため、窓が小さく、間隔が広く改造されている
のが分かります。在来線を走るため、中国の架線の高さに合わせ大型のパンタグラフを
装備しています。



鉄道好きには夢のような車両で、是非乗ってみたいですが、
中国国内では、いまいち人気がないようです。

  


最大理由は、値段と言われています。



現在、上海-北京間の片道航空券(格安チケット)は430元(約5,800円)前後で、
寝台新幹線の上段655元(約8,800円)よりも安いんです。



日本の新幹線に比べれば安いですが、やはり飛行機を選んでしまいますね。
飛行時間だけなら2時間20分ほどですし。空港までの移動、空港での待ち時間
までを含めても、北京市内→上海市内では4~5時間くらいです。



今後、割引運賃の設定など対策が必要になってくるかも知れませんね。



あと安全面の問題。



本来、新幹線は地上設備等も含めた総合システムですが、そのうちの
車両のみを販売しなければならない→安全の保証が出来ないとして、
台湾高速鉄道の受注を行った東海旅客鉄道(JR東海)が参加を見送り、
逆に積極的であった東日本旅客鉄道(JR東日本)のE2系ベースの車両が
納入されたという経緯があるのです。



中国の線路は、場所によっては列車の通らない時は、
人や自転車、動物が歩いていたりするんです。




そこを時速250kmで深夜に走行する訳です。



鉄道好きには夢のような寝台新幹線ですが、
乗ってみたい方は、自己責任でどうぞ。



下は時刻表です。上海行きのほかに杭州(浙江省)行きもあります。
将来は、更に遠い青島行きも予定しているそうです。



時刻表(上り)
D302次 D306次
上海 21:46 21:41
無錫 停車 通過
南京 通過 停車
北京 翌朝7:45 翌朝7:40

時刻表(下り)
D305次 D301次
北京 21:44 21:39
南京 停車 通過
無錫 通過 停車
上海 翌朝7:43 翌朝7:38

時刻表(杭州-北京)
D309次(下り) D310次(上り)
北京 21:34 翌朝7:35
杭州 翌朝8:56 20:13



乗車料金
北京-上海間 上段655元(約8,800円) 下段730元(約9,800円)
座席327元(約4,400円)(2009年10月現在のレート)



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