ハイパーソニック・エフェクト
2007年09月28日

ハイパーソニック・エフェクト。
なにやらSFチックな言葉ですが、一体何のことでしょうか。
この言葉は2000年6月に米国生理学会の脳・神経科学論文誌 Journal of Neurophysiology に掲載された論文が元になっているので、かなり以前からある言葉です。
簡単に言うと、人の耳に聞こえない音でも癒しの効果があることが発見された、というものです。
ヒーリング音楽を聴いても、いまいち癒しきれない、なんて体験は誰にでもあると思います。
また、アナログ愛好家からは、LP(レコード)の方が音楽の雰囲気が出ていたという意見が出ることがあります。いわくCDは冷たい。固い。ぬくもりがない。ざらつく。余韻がない。など。
私自身、大昔にレコードで聴いた音楽の方が記憶に鮮明に残っているような気がします。
それらの原因は、CD作成時の高周波成分のカットにある、と言うのです。
一般に人間の聴覚では、20kHz以上の音は知覚できないとされており、その可聴域の研究結果がCDの音域設定の基礎になっているそうです。(低域は20Hzといわれている。)
近年音楽の視聴スタイルも急速に変化し、CDから取り込んだ音楽をiPodで視聴することが当たり前となりました。しかし、CDの音源は44.1kHzでサンプリングされているため、おおよそ20kHz以上の高周波成分はカットされています。これは人間の可聴上限である20kHz以上の高周波成分をカットすることでファイルサイズを小さくしているためです。
現行のCD、MD、MP3、BS及び地上波デジタル放送用音声規格はいずれも同様の高周波成分のカットを行っています。
CDへの移行時にアナログレコードの方が音が良いと言われたのは、このカットされた高周波成分に原因があります。カットされた高周波成分は非可聴なのでもちろん人間の耳には聞こえないのですが、脳波を取って調べてみると高周波成分を含む音楽の方がアルファ波が増加するなど有意な差が認められたそうです。
人が心地よい音楽を聴いてリラックスするためには20kHz以上のカットされた音域が重要な役割を果たしていたことが判明したのです。残念ながらその知見が得られたときCDは既に普及期にさしかかっており、もはやフォーマットの変更ができない状況でした。
2007年8月17日をもって製造開始から25周年を迎えたというCDは、世界初のCDが作られてから現在までに累計2000億枚超が販売されてきました。CDはそのランダムアクセス性に代表される使い勝手の良さから圧倒的に支持されてきましたが、音質が優れているという評価は現在では正しくないと言えるようです。
人間の耳に聴こえない超高周波成分が音質におよぼす影響についてはかねてから学術、技術的な関心が存在し、音質評価実験の結果に基づいてそれを認めない音響学者と、体験的にそれを認めるアーティストやレコーディングエンジニアの間で、立場の違いを背景にした意見の対立があり、解決されないままに放置されていました。
この解決困難な問題に取り組むにあたり、決定的な原動力となったのが、アーティスト・山城祥二と科学者・大橋力が一つの頭脳を共有する一人の人間でした。アーティスト・山城の感性にとって自明な超高周波の効果を科学的に証明することができないのは、その実験方法になんらかの問題があるのかもしれない、と考えた科学者・大橋は、音響学の分野に生命科学的なアプローチを導入し、これまでの実験方法を根底から見直すことにより、ハイパーソニック・エフェクトの発見を導きました。この発見に至るプロセスは、単機能専門化型アプローチの限界を打破したモデルケースとして、科学史・科学哲学の格好の研究対象となろうとしています。
某大手メーカーOBからごく最近に聞いた「今だから言える裏話」という興味深い記事があります。
「CDが誕生した2年後に大橋力(つとむ)筑波大教授(芸能山城組を率いる音楽家の山城祥司氏でもある)から20kHz以上が必要という論文が発表されました。ちょうどCDが普及しはじめた時期なのでオーディオ業界はとても困りました。このため大手のオーディオメーカーたちは非公式に何回か集まって、この対応について協議をし、結論として、反論すると騒ぎが大きくなりそうなので反論しないことを申し合わせました。結果としてこの策はおおむね成功し、大騒ぎには至りませんでした。そしてCDはLPを駆逐するほどに大成功を収めました。」
(「今だから言える裏話」より)

SACD(Super Audio CD)のロゴ。
ハイパーソニック・エフェクトの発見は、 SACDやDVD-Audioといった新しいデジタルオーディオフォーマット開発の直接の導火線となり音響産業に大きなインパクトを与えました。
ハイパーソニック・エフェクトの効果は効果が現れるまでに時間がかかる遅延系であり、5分以上の長い時間聴かないと発現しません。CDのフォーマットの策定時に参照された実験では短い音を利用していたためこの効果は発見されませんでした。
可聴域上限を超える高周波音成分は、熱帯雨林をはじめとする自然環境音に豊富に含まれるのに対して、人工的な都市環境音にはほとんど含まれないこと、さらに可聴域上限を超える成分によって神経活性の変化が観察された部位は、モノアミン系投射神経が集中しており様々な精神疾患との関連性が示唆されることなどから、環境予防医学の面からも注目されています。
更に、ハイパーソニック・エフェクトを発現させる超高周波空気振動は、耳からではなく体表面から受容されることが実証されており、高周波成分の受容が耳を介した気導聴覚系ではなく、体表面に存在する何らかの未知の振動受容メカニズムによって行われることを示しているのです。
現在、人々は、本来必要な高周波成分がカットされた音楽や音に囲まれて生活しています。CDの後継フォーマットとして規定されたSACDは100kHz以上の高音域も記録可能ですが、オーディオマニア向けの域を出ず、あまり普及していません。現在の都市部に住む人々は高周波成分から隔離された環境で生活していることになります。
人間の健康という観点で見れば、ある程度の情報が外界から入ってくることが標準で、それらの情報を遮断してしまうと人間にとって侵害的な影響を及ぼす虞(おそれ)もあります。
2011年にはアナログ放送の全廃が決定しており、全面的にデジタル放送(24kHz以上切り捨て)に移行する予定になっていますが、これは問題ないのでしょうか?
技術は日々進歩しています。すでにいくつかの解決策があります。
SACDやDVD-Audioも1つの解決策ですが、膨大にたまったCDはどうすればいいか、という意見は当然出てきます。
メディアの方で高周波成分が記録できないのであれば、出力段で失われた高周波成分を補完すれば良いという発想の技術があります。どうせ高周波成分は耳に聞こえないのだから、可聴音に基づいて上手に欠落した高周波成分を生成してやれば、ハイパーソニック・エフェクトが発現するかもしれない、というわけです。原音のままである必要はないので(どうせ聞こえないので分からない)、それほど困難無く補完可能であるようです。

高音域修復技術は多く存在しますが、上写真のFIDELIXのAH-120K (アコースティックハーモネーターシステム)は、失われた高周波成分を合成して補うオーディオ機器で、CD、MD、MP3であっても120kHzまでの高音域を再生し、リアルな臨場感を演出するといいいます。ハーモネーターは音楽信号の6kHzから20kHzのレベルに見合うよう、失われた20kHzから120kHzまでの超高域ランダム波をダイナミックに発し、原音のスペクトルに酷似させます。これによって、今まで見えなかった音場や感じなかった演奏のダイナミズムが再現されるらしいのです。
でも高いじゃないか、という意見もあるでしょう。私もそう思います。
ですが、SACDやDVD-Audioの専用機一式を揃えるよりは安価ですし、iPod等のMP3にも使えるのは汎用性が高いです。
最近はSACDやDVD-Audioの専用機もだんだん安くなってきていますし、コンパクトオーディオでもSACDの再生が可能な機種も登場しています。
ちなみに、PLAYSTATION3(PS3)でもSACDの再生ができます。
科学技術の進歩は目覚ましいものがあります。近い将来、余計な心配だったと思う日が来ることでしょう。
自然の音を体全体で聴くことにより人間は癒される。
この事実を科学的に証明した大橋教授には頭が下がります。
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